外壁を考える 2 

黒の家の外壁は金属サイディングです。金属鋼板の裏に16mmほどの断熱材が付いています。パネル状になっているので施工性がよく、現在はよく使われています。金属サッシとも相性がよく、コーナーの金物や板金なども利用して少し個性的な形にすることができました。
一番気をつけなければならないのは傷です。外部まわりは外壁を施工してからも設備や庇などさまざまな職方がはいるので、窯業系のサイディング以上に注意が必要です。
現在はコストやメンテなどの面でサイディングが多くなってしまいましたが、かつてはもっといろいろな仕上をやっていました。

こちらは防水モルタルの刷毛引き仕上げ。左官は手間がかかりメンテナンスも必要なため、だんだん使えなくなってしまいました。私はとても好きな仕上です。

こちらは幅広のガルバリウム鋼板のタテハゼ張り。1枚ずつ手作業で嵌合させていくのでかなりの手間がかかります。1枚が大きいのでたわみがでることもあります。再塗装は不要。
硬質なイメージになり、それはそれで個人的には好きな表現のひとつです。

サイディングのような既製品の材料はとにかく選定することに神経を使います。その後はある部材できれいに問題なく仕上げていくことを考えます。左官や金属板のような素材のままに近いものは、選定した後どのように納めていくかということを膨大な時間をかけて検討していきます。雨仕舞いや部材同士の接合、見え方・・・設計者としてはとても大変な作業なのですが、それもまた楽しい仕事とといったところでしょうか。

外壁を考える 1

以前は外壁を左官やガルバリウム鋼板で設計することが多かったのですが、最近は「サイディングでお願いします」と工務店やお客様から言われます。コストや施工性、メンテナンス、防火、保証、知名度、噂などいろんな面でサイディングの人気が高いようです。特に「窯業系サイディングから選んでください」などとかなり断定的にご指示いただくことも。設計者的にはデザインがかなり絞られてしまう頭を悩ませる頭を悩ませるものです。

こちらの交番は木造2階建てで窯業系サイディングの白と黒でとのご要望でした。
用途が用途なので、木造住宅っぽくしたくないのとコスト的にもかなり押える必要がありました。結果、ほとんどの部分をリブ9(ニチハ)のアグレアブラックを横張りとし、1階の正面部分のみCOOLイルミオ(ニチハ)のグラニットNMホワイトを使用しました。無機質で堅牢なイメージになったかと思います。

窯業系サイディングには石目調やレンガ調、タイル調などで高級感を出そうとするものも多くありますが、個人的にはベーシックで無機質なものを採用し締まった印象の建物にするよう心がけています。最近の窯業系サイディングはリアル感を追求しているものが多いですが、個人的にはどこまでいってもサイディングはサイディングという印象は拭えないし、はやりすたりも激しく数年で古くさく感じてしまうものも多い気がします。

平屋について考える

中庭のある家は最初、平屋で計画していました。中庭を取り囲むようなロの字のプランです。各部屋が中庭に面して開いているので、どの部屋にいても気配が伝わるような感じがします。屋根勾配を緩くし、冬でも中庭にいくらか日差しが落ちるように計画していました。残念ながら予算的に難しくなってしまい計画を一から見直しました。
中庭プランにすると外壁面や窓が多くなります。また、2階建てに比べて地業が増える、基礎の面積が増える、屋根の面積が増える、配管が長くなるなどなどコストを考えると設計者的には心苦しいことがたくさんあります。

しかし設計する側からすると、たまにしかやってこない平屋の計画というのは普段は考えない楽しい要素がたくさんあります。特に楽しいのは屋根や小屋裏部分の設計。2階建てならばリビングに吹抜を設けたり、一部を屋根裏部屋(ロフト)にする程度ですが、2階に諸室を並べる必要がないのでもっと大胆なことが考えられます。

床高さ、天井高さを自在につくり、光の入れ方や部屋のつながり方を考えたり、ロフトからあちこち見渡せるようにしたり、大胆な構造を現わしにしたり、どこにもないかっこいい屋根になったり・・・。変化に富んだ面白い建築になりそうです。

無垢の床板のはなし

黒の家は1階の玄関、廊下、LDKの床を無垢カバザクラのオイル塗装品で仕上げています。
無垢板はカタログやネットの写真では色味や節の入り方、堅さなどがわからないので、必ずサンプルで確認します。それでもロットの関係などでなかなか思うようなものが入ってこない場合もあります。一期一会みたいなところもあるので、現場に入ったときに確認するようにしています。複合フローリングにはない質感があり、部屋全体の素材感がとても柔らかくなりました。
オイル仕上げは水や汚れに弱いのでウレタン塗装を選ぶ場合もあると思いますが、個人的にはオイル仕上をお勧めしています。ウレタン塗装ですと木の表面にラップをしてしまうようで、無垢の木の良さが死んでしまうような気がします。無垢板にするなら、水も汚れも傷も日焼けもおおらかにとらえてハードに使ってよいのではないかなと思います。水分は早めに拭き取ればシミになりにくいです。年に1回ほどオイルを塗り直すと美しさが長持ちするようです。経年劣化であまりにも汚れてしまった場合はサンダーがけをしてオイルを塗り直すなど、メンテナンスも可能です。
高級品と思って遠慮せず、ガンガン使うのが無垢の床板の楽しいところではないかなと思います。

既製品で工夫する 階段

 図面を書いて思い通りにつくるというのが設計の本来のあり方だとは思いますが、予算のこともあり工期のこともありなかなか設計者の思い通りにさせてもらえないことも多々あります。それでもどうにか良質なものにしたい。
 黒の家でこのことを考えたのは階段です。当初は図面を書いて大工さんに作ってもらういわゆる造作にしようとおもっていましたが、予算調整で段板と手摺は既製品ですることになりました。一般的な一坪でイッテコイする階段なので狭く感じないよう、中心の手摺を開放的なものにしたいと思いました。

 段板は2階の床板と同色で濃い目。壁は白なので巾木や蹴込みも白。手摺を黒にしてシャープで引き締まった印象にしています。すべて既製品でできています。壁もごく一般的なビニールクロスです。手摺は外側を回っている丸いものと中心の角のものは別のメーカーで選んでいます。部材の発注前に大工さんとよく打合せをし細かい部分の納まりも確認しておくことで、既製品をつかっていても感じのよいものなっているかと思います。

玄関を考える

 「玄関は1間は欲しい」とよく言われます。土間が1畳、上がったところが1畳と考えていらっしゃる様子。でも玄関が必ずしも1坪でなくてはならないなんてことは全くないと思います。
 ミニマルな設計をした黒の家では1間より45㎝狭い130㎝ほどの幅です。

 幅は狭くしていますが壁で囲ってしまうのではなく階段の登り口を設けたり、シューズクローゼットの入口があることで広がりがでてきます。30坪のコンパクトな住まいですが玄関をこの寸法にしたことで玄関脇には1.5畳のシューズクローゼットもできました。階段上部に窓があり自然光が差し込むのも狭く感じさせない工夫です。床はカバ桜の無垢材を使用して温かい感じに仕上がっています。

 中庭のある家はあえて広い玄関にしています。

 以前農家だったこの住まいでは来客も多く今も野菜などを育てており、家の内外を忙しく行き来されています。玄関を庭の正面に設けて廊下、玄関、庭が一体となった場所にしています。庭側が南なので、和室も日当たりがよくいつでも庭を楽しめるようになっています。

 真四角の1坪玄関から、少し発想を豊かにしてみると家づくりが楽しくなるかもしれません。

黒の家 竣工

千葉県松戸市に建築中だった黒の家が完成しました。
既製品を使いながらも住み手のご要望を取り入れ、唯一の住まいになったと思います。
写真はエントランス部分の階段を職人さんが洗出ししている風景。本当の洗出しは手間がかかるため、簡易的に表面をさらってもらいました。つるっとしたコンクリートとは違い、少しだけ骨材があらわになってやさしい表現になりました。
腰が痛いと言いながらがんばってくれた左官屋さんに感謝。