無垢の床板のはなし

黒の家は1階の玄関、廊下、LDKの床を無垢カバザクラのオイル塗装品で仕上げています。
無垢板はカタログやネットの写真では色味や節の入り方、堅さなどがわからないので、必ずサンプルで確認します。それでもロットの関係などでなかなか思うようなものが入ってこない場合もあります。一期一会みたいなところもあるので、現場に入ったときに確認するようにしています。複合フローリングにはない質感があり、部屋全体の素材感がとても柔らかくなりました。
オイル仕上げは水や汚れに弱いのでウレタン塗装を選ぶ場合もあると思いますが、個人的にはオイル仕上をお勧めしています。ウレタン塗装ですと木の表面にラップをしてしまうようで、無垢の木の良さが死んでしまうような気がします。無垢板にするなら、水も汚れも傷も日焼けもおおらかにとらえてハードに使ってよいのではないかなと思います。水分は早めに拭き取ればシミになりにくいです。年に1回ほどオイルを塗り直すと美しさが長持ちするようです。経年劣化であまりにも汚れてしまった場合はサンダーがけをしてオイルを塗り直すなど、メンテナンスも可能です。
高級品と思って遠慮せず、ガンガン使うのが無垢の床板の楽しいところではないかなと思います。

既製品で工夫する 階段

 図面を書いて思い通りにつくるというのが設計の本来のあり方だとは思いますが、予算のこともあり工期のこともありなかなか設計者の思い通りにさせてもらえないことも多々あります。それでもどうにか良質なものにしたい。
 黒の家でこのことを考えたのは階段です。当初は図面を書いて大工さんに作ってもらういわゆる造作にしようとおもっていましたが、予算調整で段板と手摺は既製品ですることになりました。一般的な一坪でイッテコイする階段なので狭く感じないよう、中心の手摺を開放的なものにしたいと思いました。

 段板は2階の床板と同色で濃い目。壁は白なので巾木や蹴込みも白。手摺を黒にしてシャープで引き締まった印象にしています。すべて既製品でできています。壁もごく一般的なビニールクロスです。手摺は外側を回っている丸いものと中心の角のものは別のメーカーで選んでいます。部材の発注前に大工さんとよく打合せをし細かい部分の納まりも確認しておくことで、既製品をつかっていても感じのよいものなっているかと思います。

玄関を考える

 「玄関は1間は欲しい」とよく言われます。土間が1畳、上がったところが1畳と考えていらっしゃる様子。でも玄関が必ずしも1坪でなくてはならないなんてことは全くないと思います。
 ミニマルな設計をした黒の家では1間より45㎝狭い130㎝ほどの幅です。

 幅は狭くしていますが壁で囲ってしまうのではなく階段の登り口を設けたり、シューズクローゼットの入口があることで広がりがでてきます。30坪のコンパクトな住まいですが玄関をこの寸法にしたことで玄関脇には1.5畳のシューズクローゼットもできました。階段上部に窓があり自然光が差し込むのも狭く感じさせない工夫です。床はカバ桜の無垢材を使用して温かい感じに仕上がっています。

 中庭のある家はあえて広い玄関にしています。

 以前農家だったこの住まいでは来客も多く今も野菜などを育てており、家の内外を忙しく行き来されています。玄関を庭の正面に設けて廊下、玄関、庭が一体となった場所にしています。庭側が南なので、和室も日当たりがよくいつでも庭を楽しめるようになっています。

 真四角の1坪玄関から、少し発想を豊かにしてみると家づくりが楽しくなるかもしれません。

黒の家 竣工

千葉県松戸市に建築中だった黒の家が完成しました。
既製品を使いながらも住み手のご要望を取り入れ、唯一の住まいになったと思います。
写真はエントランス部分の階段を職人さんが洗出ししている風景。本当の洗出しは手間がかかるため、簡易的に表面をさらってもらいました。つるっとしたコンクリートとは違い、少しだけ骨材があらわになってやさしい表現になりました。
腰が痛いと言いながらがんばってくれた左官屋さんに感謝。