- 中古物件の購入は難易度が高い
中古物件を購入したので用途変更をするにあたって建築基準法のチェック(法適合確認)をしてほしいという問合せをいただくことがあります。
建築士としてはその物件を購入する前にご相談いただくのがよいと思います。事務所ビルや共同住宅などに限らず戸建住宅についても用途変更、耐震、断熱などリノベーションやリフォームをする場合には基本的には法律を守る必要があります。それらを知らないで別の用途に転用したり、間取りを変えたりすることは、法律違反になる行為だけでなく構造上の無理が生じたり、想像していたような使い方ができない場合もあるからです。不動産の取引に関わるのは不動産屋であり、不動産屋は建築のプロではありません。建物を売買するのが仕事であり建築に関する法規を熟知しているわけではありません。恐らく用途変更が可能かどうか、その場合にどのような改修が必要になり費用がどれくらいかかるかといった事は購入者自身が把握する必要があると思います。
とはいえ購入するかどうかわからない物件について建築士に法規チェックを事前に依頼するオーナーはあまりいらっしゃらないようです。新築に比べて安価であるせいかおおよそ大丈夫だろう、いざとなれば費用をかければ法規に適合させることも可能だろうとお考えなのかもしれません。しかし致命的な不適合、想像以上に費用のかかる改修工事が発生しないとも限りませんので事前に法規チェックをしてくれる建築士に相談されることをお勧めします。
- 「確認済証」と「検査済証」について
中古物件がすべて適法に存在しているとは限りません。法規は次々と改正されていますし、そもそも建築時適法に建築されているかもわかりません。中古物件を活用しようと思ったら、まず建築されたとき(基準時)に適法だったかを確認しておく必要があります。それを知る手がかりが「確認済証」と「検査済証」です。
確認申請とは建築物を建築、増築、用途変更などする場合、工事着手前にその計画が様々な法律に適合しているかを建築主事等が確認し「確認済証」を交付することです。中古物件であっても建築当時確認申請を受けているはずです。確認済証はその建築物が当時の法規に適合した設計であるという証なので、大切に保管しておく必要があります。また今後の増改築等の法的根拠にもなりますので、確認済証(B5又はA4サイズ1枚)と添付書類、添付図面が一式そろっていることが重要です。これらがない建築物は購入することはお勧めしません。確認済証はあるが図面がない場合は図面を復元する必要があります。法的に問題ないかのチェックもしておく必要があります。図面だけがある場合はそれが確認申請を受けた図面かわからないので法的には信用できないという事になります。また、図面と現実の建物が違っていることもあります。
「検査済証」とは、工事が完了した時に法律に適合しているか完了検査を行ない合格したときに交付されます。一般的にはA4サイズ、古いものははがきサイズやB5サイズです。この書類がある場合は当時の法規に適合しており、おおよそ現実の建物と図面は一致しています。新築時にきちんと設計し工事したということが証明できるわけです。
しかし中古物件で年代の古いものになればなるほど取得しているものは少ないようです。耐震診断などで伺う戸建住宅では検査済証を受けていないものも多く見かけます。このように一口に中古物件と言っても、残っている書類によって再活用への出発地点が違ってくることがあります。
- 中古物件の改修など、確認申請が必要か否か・・・
前段の話で建築当時と現在の法的適合の状況を把握したところで、では今回はどのような工事をするのかという話になります。その工事の内容によって申請が必要な場合もあります。
防火地域及び準防火地域外で、増改築等工事をする部分の床面積の合計が10㎡以内の場合は確認申請をする必要はありません。防火地域及び準防火地域内であれば増改築等工事の面積に関わらず確認申請が必要になります。
また大規模の修繕若しくは大規模の模様替(建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕/模様替えをいう。)をしようとする場合にも確認申請が必要になります。
用途変更の場合は特殊建築物の用途となる部分が面積200㎡を超える場合、確認申請が必要となります。(類似の用途であれば不要。)
いるの?いらないの?どっち・・・となってしまうような内容ですね。そんなわけで法適合確認という仕事はなかなか奥深いものがあります。
(確認申請が不要であっても現行規定に適合させる必要がある部分もあります。)
戸建住宅から施設、ビルまで用途、構造を問わず、用途変更やリノベーションの法適合確認、既存建物調査、リノベーション、耐震診断、断熱改修などご相談にのります。詳しくはメールでお問い合わせください。