ヴォーリズの設計から学ぶこと 

少し前まで設計仲間と研究をする会に参加していた。それぞれ自分が研究したいことを持ち寄って自分の考えを聞いてもらい、ご意見をいただくような会である。その研究の一部でアルコーブというものを取り上げた。およそ1間角(1.8m×1.8m)のくつろげる空間のことをアルコーブという。(「パタン・ランゲージ」C.アレグザンダー著、179アルコーブ参照。)

新旧様々な建築にこのアルコーブがあり、本や写真などを参考に空間構成や窓、天井、仕上、家具などの有り様を研究した。研究対象は住宅が多いのでなかなか現実の空間を体感できる機会は少ない。

先日静岡で建築を観て歩いたとき、素晴らしいアルコーブに出会った。旧マッケンジー邸の食堂の一角である。

南西に張り出したサンルームのような空間で、おだやかな日差しで満たされた安らぎの場といった趣がある。現在は展示室となっている食堂の一角を緩やかに分節し特化している。腰窓の高さはソファーの背もたれの高さからカーテンボックスの下まで。開放感がありながら品格の感じられる丁寧な設計だと思った。窓枠や中桟の寸法も美しい。影まで気をつかって設計しているのかと思うほど。

技術が発達するほど、薄く軽く透明にという方向に傾倒していく建築がある一方で、物質をしっかりとらえて質感、量感をあらわにしようとする建築もある。古い建築を見ると技術的な制約がありつつ「どう見せるか」ということに苦心している姿がある。今となってはいろいろな表現ができるわけだが、人の「居場所」というのは重すぎず軽すぎず、装飾しすぎず簡素になりすぎずというところにあるのではないかと考えている。

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