先日地元である静岡の建築を観て廻った。新旧取り混ぜておよそ30棟。新しい大きな体育館から築50年以上の住宅まで。内部は観られないものもあったが、とても勉強になった。
こちらは昨年できたばかりの静岡市歴史博物館。(設計:SANAA)
張り出した展望廊下からは富士山がきれいに見える。外部はガラスと金属のシャープな印象。1階は発掘された戦国時代の道と石垣の遺構が露出展示されている。遺構を含めた平屋部分には大屋根が架けられていて、正面に見えている四角い箱の部分(2、3階)は展示室になっている。
SANAAらしい美しい佇まいだが、特に平屋部分の大屋根が気になった。外からは薄く見える屋根だが、内部はかなりスパンのとんだダイナミックな構造をしている。しかも屋根全体に微妙なたわみのようなものがある。天井がかなり高い巨大な空間の中をガラス張りの心許ないスロープをゆるゆると歩いていると平衡感覚がおかしくなりそうだった。
こちらは実家の近くに建っている倉庫である。幼い頃から建っている記憶があるので40年以上経っているに違いない。こうした昭和40~50年代の名もない建築にはどこか哀愁がある。バブル期に比べて良質なコンクリートが使われていたという話もあるが、50年近くも残っているところをみると大事にされてきたのだと思う。塗装の塗り分けも潔いしかわいらしいし愛着がわく。改修したのかもしれないが、ブロンズ色のアルミ製の住宅用玄関引戸なんか「いさぎよさ」の局地ではないか。
こういうものを見せつけられるとデザインとはなんだろうといつも考える。
かつて師事した建築家は朽ちても美しいものをと言っていた。